おまとめ略奪商法に手を貸すCFJ専属司法書士の県議会議員
2020.06.19
「おまとめ」の罠

香川県高松市に「高松あすなろの会」という多重債務問題に詳しい市民団体がある。全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会という全国組織に属している。2007年5月のある日、山本幹男さん(仮名・56歳)は手紙をたずさえてこの場所を訪れた。手紙はこんな文面だった。

「通知書 高松地方裁判所民事部不動産執行係 別紙物件目録記載の不動産に対する競売物件について、下記のとおり売却を実施するので通知します…」山本さんの親族は香川県西部で代々養鶏を営んできた。その家業の地である先祖伝来の自宅と畑を競売にかけられたのである。債権者はアイフルだった。

山本さんによればことの発端は7年前、2000年3月にさかのぼる。「サラ金数社から借金があって困っていたんです。そこヘアイフルから電話がかかってきました。家を担保に<おまとめ>すれば金利が低いから得ですよ、というんです」電話は不動産担保ローンの勧誘だった。「得ですよ」というアイフル社員の言葉を山本さんは信じた。言われるままに自宅を担保に入れ、300万円を借りて「一本化」した。

ところが「おまとめ」した結果は楽になるどころではなかった。金利は低くなったのは事実だが、毎月の返済額が支払い能力を超えていることに違いはない。しかも契約時になにかと経費を取られており、借金の額は増えていた。結局一年ほどで行き詰ってしまう。「家を取られるのではないだろうか」動揺した山本さんの目にとまったのが週刊誌に載っていたアイク(CFJ)の広告だった。「10万円を借りるつもりで電話したんです。すると、金利が低いからウチの不動産担保で借り替えたほうがいいと言われて…」

「助言」を信じて山本さんはアイクに借り替えることにした。自宅のほか、あらたに物置の土地や畑を担保に加えた。融資額は600万円。そこからアイフル分を返済し、登記費用などの支払いを行うと手元に残った金額はしれていた。このアイクとの契約がなされた際、興味深い人物がかかわっている。根抵当権の設定などを行った司法書士・村上豊氏。民主党の香川県議会議員だ。村上氏については後に触れる。

アイフルからアイクに借り替えたものの苦しい状況は変わらなかった。借金の額が増えた分さらに負担が重くなった。返済にあえぐことおよそ2年、再びアイフルから電話がかかってくる。「おまとめしませんか、楽になりますよ」なす術を知らず従った。借金のことで頭はパニック状態、わけがわからなかったと山本さんは振り返る。

「言われるままありったけの土地を担保にしてアイフルに借り替えました。借金は780万円に増えていました。滞納した税金やら司法書士への経費やらを払って実際に渡されたのは50万円ほどでした。月々の支払い額も増えて15万円くらい…とても払える額ではなかったんですが」

やがて、猛暑で鶏が死ぬなどして養鶏の仕事もうまくいかなくなり、わずかの収入は途絶えがちとなった。そしてとうとう完全に払えなくなってしまう。取り立てはうるさかった。だがどうしようもない。「払えない」と説明してなんとかやりすごした。

何年か我慢するうちに取り立てはやんだ。不安ながらもほっとしていた。そこヘアイフルが競売申し立てをやってきたのだ。もともとは「返済が楽になる」という言葉を信じただけだった。土地屋敷をすべて失いかねない事態になろうとは想像だにしなかった。「何度も死のうと思いました。だまされた…」うなだれて山本さんはこぼした。

不幸中の幸いというべきだろうが、その後、競売は落札者が現れなかったために不成立となり、アイフルは競売申し立てを取り下げた。だがいつまた財産を差し押さえられるかわからない不安におびえながら、山本さんは毎日を送っている。「私が担当した不動産担保ローンのお客さんで完済できた人は1人か2人。9割方は1年ほどで払えなくなっていました」そう証言するのはアイフル元社員の男性だ。払えなくなるのがあたりまえ。山本さんのようなケースはごく普通のケースだという。

おまとめローンを売りまくってきたというCFJの現職社員も打ち明ける。「担保物件を売らせて回収するわけですよ。売らせるために早く行き詰らせる。売りたくなけりゃほかで借りさせて払わせる。まさに略奪ですね。<焼畑商法>って呼んでいたほどです」

焼畑商法はじめから不動産を売らせることを前提として融資していたというのである。しかもアイフルとCFJの間を「キャッチボール」して負債を膨らませる。サラ金の顧客で不動産を持っているケースは「おまとめ」の標的、「カモ」と呼ばれた。収入は少なくても土地屋敷のあった山本さんは格好のカモだったということらしい。

CFJの専属だった民主党香川県議

さて、先に紹介した香川県議会議員で司法書士の村上豊氏に関する話である。アイク(CFJ)が山本さんの自宅と土地を担保に取る際に、村上氏は司法書士として根抵当権設定など3件の登記を行っている。1件数万円の登記費用は融資金から天引きされていた。

村上氏は5度の選挙を勝ち残り、民主党香川県連の代表代行も務めたベテラン議員だ。公務に党の仕事にと多忙なはずの人物が煩雑なサラ金の登記をやっているとは、いささか奇妙な印象を受ける。村上氏をめぐる事情は高松市の旧アイク支店で勤務していたという元社員の女性が知っていた。

「村上先生はアイクと専属契約をしていた<指定司法書士>でした。香川では2人いました。村上先生は費用が割安なのと、いつでもすぐに登記をやってくれるので評判でしたよ。もっとも本人の姿をみることはほとんどなくて、実質仕事をしていたのは助手で行政書士の奥さんのようでしたが」村上県議はCFJの専属だったというのだ。事実、後日筆者はCFJの「指定司法書士」リストというものを手に入れるることができた。そこには彼女の言うとおり村上氏の名があった。

元社員の女性によれば、高松の支店では毎月10件前後の不動産担保融資の契約がなされていた。その登記手続きの大半が村上氏のところに持ち込まれたという。「おまとめ商法」に加担する現職県議会議員・村上豊氏。疑問はまだある。

サラ金規制見直しをめぐって激論が交わされていた2006年3月、香川県議会本会議に野党議員有志が意見書案を提出した。グレーゾーン金利撤廃などサラ金規制強化を求める内容だった。だが与党側の反対で否決された。根回しが不十分だったのか、あるいは創業者が香川県出身者であるプロミスの影響か。否決の理由は諸説あるが定かではない。

この否決された意見書にじつは村上豊県議が提案者として名を連ねていたのだ。村上氏とCFJの関係は、当時議員の間でも知られていなかった。サラ金会社のために仕事をして対価を得る一方で、それを隠して多重債務者の味方であるかのごとく振舞う。県議会議員としてのモラルを問われる行動である。「私ならおとなしくしていますよ。あんな真似はできません」

アイフル専属の仕事をしていた香川県内の司法書士はいう。「おまとめ商法」は長年野放しにされてきたも同然だった。2006年の法改正を迎えてはじめて金融庁は目を向けはじめた。だがいかに制度を改善し規制強化をしたところで、すでに不動産を担保にとられた債務者たちが救われるわけではない。「おまとめすれば返済が楽になる」と信じた多くの善良な人たちは、住まいを失う危険にさらされ続けている。

この罪深い問題ビジネスに加担したことについて香川県議会議員としてどう思うのか。2007年1月、別の「おまとめ」被害者とともに高松市内にある事務所に本人を訪ね、質問した。良心の呵責を感じませんか。村上氏は反論した。「なんで良心の呵責なんですか、頼まれたことをやっただけじゃないですか」しかし慌てていたようだ。「おい交番に電話しろ」と居合わせた妻に命じて警察官を呼びかけ、「警察にどうしてほしいのですか」とただすと思いとどまった。

貸金業法の改正以降、村上氏の司法書士事務所では「おまとめ」業務はめっきり減り、多重債務者の債務整理を引き受けはじめたと噂される。多重債務者を生みだす過程でひと儲け、債務整理でまた稼ぐ。香川県議の報酬、政務調査費は年間約1600万円もある。もちろん税金である。「県民をなめている」と被害者のひとりは怒りを口にした。
2020.06.19 16:22 | 固定リンク | 日記

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