中国版ワーキングプア「蟻族」はなぜ増えている?
2020.05.13
我慢をするのが嫌いな世代ですから、結婚相手選びに妥協を許すはずがなく金銭的にも恵まれて育ってきているので貧しい男と結婚して苦労したいと思うはずもありません。使い慣れたパソコンを駆使して「婚活サイト」で理想の相手を探し求めようとするのも理解はできます。

しかし、これでは結婚できない男女が増え続け、ただでさえ深刻な少子・高齢化がますます加速して長い目で見ると中国の成長力をスローダウンさせることになってしまいそうです。「80後」が労働人口のかなりの割合を占めるようになった今日、そのわがままな態度や打たれ弱さが、企業現場では深刻な問題になっているようです。

わたしが知る中国の経営者たちは「80後の若者たちは、ちょっと叱るだけですぐやる気をなくしてしまう」「仕事がつまらないからと言ってすぐに辞めてしまう若者が多い」と口をそろえます。そうしたやる気のなさや仕事に対する中途半端な態度が中国経済の活力を削ぎ落としかねないことも懸念されます。

一方で「80後」には中国の個人消費を支えるマーケットリーダーとしての期待も高まっています。ファッションやトレントに敏感な彼らは好きなものにはとことんお金をつぎ込む傾向があるからです。なかには給料の大半を美容やファッション、自動車ローン、フィットネスクラブなどの娯楽に費やし、月末にはほとんどお金が残らないような生活をしている若者もいます。

このように貯金もせず収入の大半を使いはたしてしまう若者のことを中国では「月光族」と呼びます。「月光族」の中には月々の収入だけでは足りず、親から仕送りをしてもらったりクレジットカードのリボ払いを利用したりして借金を先送りしながら消費に明け暮れている若者も少なくありません。20代から30代前半の「80後」たちは、それほど多くの給料をもらっているわけではありません。

けれどもインターネットや雑誌で紹介されているようなおしゃれなライフスタイルは手に入れたいので借金まみれになっても消費をやめることができないようです。過剰消費の拡大によって多重債務や自己破産の増加といった問題を招く可能性もあります。

これも中国の急速な経済発展がもたらした大きな反動であると言えるでしょう。このほかにも「80後」の新しいライフスタイルを表す流行語に「附住族」というものがあります。結婚はしたけれど、自分たちの収入だけでは暮らしていけないので、同居している親に養ってもらっている若者たちのことです。

中国の不動産価格は年々急上昇しており、収入の低い20代の若者が家を取得するのは並大抵のことではありません。そのため親元に住み込んで住宅費を浮かし、それだけでは足りずに生活費まで援助してもらっているのです。ある調査によると、このように結婚した子どもを親が養っている家庭は中国の全世帯の6割近くにも上ると言います。

急激なインフレや住宅価格の上昇は中国の若者たちの生活を直撃し、彼らの親の世代も、かわいい子どもたちのためになけなしの資産を取り崩しながら生きているのが実情なのです。「80後」世代を象徴するもうひとつの流行語に「蟻族」というものがあります。

大学を出たのに学歴に見合った仕事を見つけることができず、低賃金の単純労働や臨時仕事に甘んじている若者たちのことです。日本流に言えば「フリーター」ということになるでしょうか。この新語が生まれたのは2009年9月、北京大学のある研究チームがまとめた「蟻族-高学歴ワーキングプアたちの群れ」(日本では2010年9月に勉誠出版が翻訳発行)という一冊の本がきっかけでした。北京で低賃金労働に明け暮れる大学卒業生たちの厳しい生活実態をレポートしたものです。

同書によれば「蟻族」には「高学歴」「弱小」「群居」(群れをつくって住む)の3つの特徴があります。月収2,000元(約2万4,000円)未満の低賃金で酷使されている「蟻族」たちは、まともな部屋に住むこともできません。そのため家賃が安い代わりに住環境の劣悪な北京市郊外の村に住み、毎日片道何時間もかけて北京市の中心部にある職場まで働きに出掛けます。

安い住居が密集する村に群れ集い、夜が明けると一斉に働きに出掛け、深夜になるとクタクタになって戻ってくるさまが、まるで「蟻」のようであることから「蟻族」と名付けられたのです。同書に登場する「蟻族」の年齢層は22歳~29歳で「80後」世代にピタリと当てはまります。
2020.05.13 16:50 | 固定リンク | 日記

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